特集

若者人材の採用力を高めて発展する地域企業を目指して
~山形県内企業の採用に関する実態調査 結果概要と考察~

目次
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今後の若者の定着・回帰にとって重要になる、大学卒業者の地域での就業促進のためには、若者を雇用する側の地域企業において、これら人材の採用力を高めていくことが求められる。大学新卒者の採用を巡っては、コロナ禍でも求人倍率の底堅い推移がみられ、今後、特に、地方の中小企業による採用の状況、動きなどには注視を要する。本稿では、これらを踏まえ、山形県内企業を対象とした、採用状況や採用活動、就業条件など、大学新卒者の採用に関する実態調査を紹介するとともに、大学新卒者の採用拡大や新たな採用の取り組みに向けた、課題、方策について考察する。

Ⅰ.はじめに

Ⅰ-1.経 緯

今後の若者の定着・回帰にとって、大学卒業者の地域での就業促進が重要な課題である。山形県においても、新規学卒者の県内就職率は、県内大学卒業者(約3割)が県内高校卒業者(約8割)を大きく下回る。これらの背景等を踏まえ、山形県では、令和2年度、当社フィデア情報総研に委託して、「県内大学生の仕事・就業への意識等調査」(以下「令和2年度調査」という)を行った[1]。これに続き、令和3年度は、若者を雇用する側となる県内企業を対象に、大学新卒者等の採用に関する調査を行ったところである。

[1] 参照:Future SIGHT レポート「若者から「仕事・就業」の場に選ばれる地域を目指して」

Ⅰ-2.大学新卒者の採用を巡る動き、情勢

ここで、民間企業による大学新卒者の採用の動きをみると、全国ベースでの大学新卒者の求人倍率は、生産年齢人口の減少に伴う人手不足などを背景に、近年、2012年卒の1.23倍から2019年卒の1.88倍へと上昇している。新型コロナの影響により、2021年卒は、10年ぶりに0.3ポイント以上低下し1.53倍となったが、1.5倍台を維持し、リーマンショック時の水準を上回っている。直近の2023年卒はポイントも上昇に転じており、コロナ禍でも底堅く推移している(図表1)。

このなかで、従業員規模300人未満の中小企業も全体と同じ動きにあるが、2010年以降の倍率は3~9倍台であり、全体と比べて大幅に高くなっている。コロナ禍のなかでは、2019年卒の9.9倍から2021年卒は3.4倍まで低下したが、2022年卒以降は、5倍台で推移している(図表2)。特に、地方の中小企業では、生産年齢人口の減少や新型コロナの影響とともに、若年層の首都圏等への人口流出も顕著であり、これらの影響には注視を要する。

図表1 求人総数および民間企業就職希望者数・求人倍率の推移
図表1 求人総数および民間企業就職希望者数・求人倍率の推移

(資料)リクルートワークス研究所「第39回ワークス大卒求人倍率調査(2023年)」

図表2 従業員規模(4区分)別 求人倍率の推移
図表2 従業員規模(4区分)別 求人倍率の推移

(資料)リクルートワークス研究所「第39回ワークス大卒求人倍率調査(2023年)」

また、山形県について、民間企業による大学生も含めた新卒者の採用に関する意向調査の結果でみると、「翌年度に採用する」意向にある企業の割合は、リーマンショック時となる2009年度の22.6%から緩やかに増加し、2015年度以降は40%台で推移している(図表3)。新型コロナの影響により、2021年度は36.8%に低下し7年ぶりに40%を下回ったが、リーマンショック時の水準よりは高く、翌2022年度には40.6%と40%台に回復しており、全国と同じく底堅さがみられる(図表3)。

図表3 新卒者の採用状況 ~ 新卒者について翌年度採用の意向(回答割合)の推移 ~
図表3 新卒者の採用状況 ~ 新卒者について翌年度採用の意向(回答割合)の推移 ~

(資料)フィデア情報総研「山形県内企業景気動向調査(特別調査)」

Ⅰ-3.県内企業の大学新卒者の採用の現状、考え

こうした動き、情勢の下で、県内企業の大学新卒者等の採用に関する実態調査では、「学歴別の正社員の採用・募集の状況」、「情報提供等の採用活動の方法・手段」、「採用にあたり重視するポイント」、「採用の今後の意向」、「給与・福利厚生等の就業条件」などについて、アンケート調査を行った。

本稿では、この調査の結果(概要)を紹介するとともに、調査結果から読み取れた課題、今後の方策の方向性について、筆者個人の見解として示す。

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