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若者から「仕事・就業」の場に選ばれる地域を目指して

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Ⅲ.大学生が「仕事・就業」の場に選び、回帰・定着する地域づくりに向けて

大学生が地域で「仕事・就業」を選択し、回帰・定着していくために、調査から読み取れる課題と、今後の方策の方向性を示す。

Ⅲ-1.県内企業の情報発信、採用活動等の観点

第一に、学生は、インターンシップや説明会等各種機会を通じ県内企業の情報を得ている一方で、仕事の「“専門性・やりがい”の明確な情報が十分届いていない」、「県内では、製造業系の企業が多く、特に、文系が興味を持つ仕事・職種が少ないイメージがある」といった意見があった。 

まずは、大学の専攻や職種・業種の志向に具体的に応じ、学生目線によるきめ細かな情報、例えば、職種を切り口に県内企業の業種を横断した仕事内容の分かりやすい情報や、学生のニーズを踏まえた業種ごとの説明機会の提供などにより、県内企業への就職の選択肢を見える化し、拡大することが重要である。また、コロナ禍に伴う「首都圏より東北・山形県内」という声や、東北出身者の東北全体を就職希望地とする志向もうかがえたことを踏まえ、例えば、県内企業に就職した東北出身の大学OB・OGとの連携による、東北出身学生向けの交流会や説明会など採用活動の工夫も望まれる。

第二に、学生は、最前線で働く社員の話を直接聞き、仕事を実践的に体験して、企業の現実の姿を把握し、実際にその企業で働くことの実感・納得感を持って、就職先を選びたい意向にあると考えられる。企業を知り、理解することから、現場の社員との対話や実際の仕事に従事する体験・実践までを一連につないだ就職支援が重要になろう。このなかで、学生は社員と同じ現場のリアル感を持つことができ、企業も学生を評価し、採用に直結させる形のインターンシップの普及なども望まれる。 第三に、学生は、仕事の質・内容を基本に据えつつ、福利厚生や給与水準、社風等も総合的に考慮して、企業を選択していると考えられる。県内企業においては、就業条件・環境の向上は、企業発展の基盤となる人材への投資、人材確保の条件整備という前向きな認識を持ち、継続した取り組みが求められよう。企業の実情に応じた、ノウハウ・情報の提供や伴走型の支援等とともに、企業からも、福利厚生や女性への両立支援など、学生の判断材料となる情報の積極的な発信・提供が望まれる。

Ⅲ-2.学生の就業志向に応じた産業振興の観点

第一に、IT・情報通信系、専門サービス系、研究開発など、学生が今後採用拡大を求めるような、大学での専攻や専門知識を活かせる職種・業種、やりがいのある仕事は、企業が付加価値を創出し、人材が相応の所得を得るための源泉となる。これを踏まえ、大学生の県内就業については、高い知識・スキルをもった人材の就業・活躍と県内企業の成長・発展との好循環へとつなげるという視点を地域で共有し、取り組むことが重要になる。

こうした就業の受け皿の創出・拡大に向けて、企業のイノベーション、生産性向上、規模拡大、市場開拓など、付加価値を創り、収益を上げる力を高めて、企業競争力と経営基盤を強化する取り組みと一体となり、質の高い仕事や職種を提供していくことが求められる。こうしたポテンシャルが期待される地域の中小・中堅企業について、これまで大卒者の採用が少ないような企業も含め掘起して、その取り組みを支援し、モデル事例を創出・普及することも考えられよう。

また、山形県の主力産業である製造業系企業等では、ウィズコロナ・ポストコロナを見据えた、IT投資や新事業開発、マーケティング機能等の強化と連動させ、大卒者等専門人材の確保・活用を重点的に進めることが重要になろう。      

第二に、新型コロナを契機とした、分散型社会への移行、デジタル化の進展を見据え、事業所機能等の分散・再配置、サプライチェーンの国内回帰、若い世代など地方への人流などの動きを捉えて、山形県の強みや機能集積等を活かした、企業誘致・産業集積を進めることも重要になる。大学生が志向する、研究開発・事業所機能等の誘致や、IT等情報系産業の立地促進、リモートワーク・テレワークの拠点形成なども、中長期の視点に立って、進めていくことが望まれる。

Ⅲ-3.産学官連携による推進の観点

こうした就業に関わる大学生の率直な声・意見を学生の県内就業促進に関係する産学官が共有し、連携した取り組みに反映させることも重要になろう。このなかで、まずは、県内企業が学生の声・意見について、当面する課題であるコロナ下での採用活動の評価なども含め把握し、採用活動の検証・改善等に反映させるとともに、学生の目線・志向とマッチさせていくための機会・場の提供や支援を行い、地域全体での取り組みのスタートとしていくことが望まれる。

【参考文献・資料】

  • 地方創生サイト「まち・ひと・しごと創生 – 地方創生
    • 第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(令和元年12月)
    • 第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略(2020改訂版)」(令和2年12月)
    • 「まち・ひと・しごと創生基本方針2021」(令和3年6月)
  • 山形県ホームページ「令和3年度山形県総合政策審議会 | 山形県
    • 山形県総合政策審議会(令和3年7月30日) 資料
      資料2-3 「若者の定着・回帰の促進に向けた施策の展開方向」

この記事を書いた人

株式会社フィデア情報総研

地域政策コンサルティング部 理事佐々木 昭喜

株式会社フィデア情報総研 山形支社
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