- この記事の企画
- 地域が抱えるさまざまな課題をテーマとして取り上げ、先進事例や調査結果、各種データなどを通して「豊かな地域社会」につながる提言を発信します。
- 目次
※この記事はFuture SIGHT No.93からの再掲です。
予測モデルの概要と前提条件
1.予測モデルの概要
本調査では、各県のマクロ計量モデル(連立方程式モデル)を作成し、2019年度から2021年度までの予測を行った。(注1) モデルのフレームワークは、いわゆる需要決定型である。通常、短期の経済動向は需要側の要因によって左右されるため、需要決定型を採用した。すなわち、県民経済計算における支出系列を被説明変数とし、マクロの経済変数を説明変数としている。推計期間は2006年度から2018年度までの13年間であり、式の本数は91 本、外生変数は28、ラグは1期である。1県あたりに直すと平均的に15本前後の式で説明している。なお、東北の値は各県の推計値を積み上げて算出した。
(注1)各県から県内総生産(GRP:Gross Regional Product)の確定値が公表されるまで、年度終了からおよそ2 年半待たなくてはならない。このため、現時点では各県のGRP は2018 年度までしか公表されていない。
2.予測の前提条件
(1)全国の見通し ~主要調査機関の予測~
モデルの外生変数には内閣府と国内の主要調査機関の平均予測値を利用した。2021 年度の予測の前提条件と結果は次の通り。
2020 年度は新型コロナウイルス感染症の拡大に歯止めがかからない中、3 回目の緊急事態宣言延長に伴う消費の下振れを主因として、戦後最大の落ち込みとなった。2021 年度は、引き続きコロナ禍の状況が続いているものの、ワクチン接種が進展して経済活動が段階的に正常化することで、緩やかながらも回復に向かうとみられている。また、中国や米国経済の加速によって輸出が底堅く推移するとみられていることから、実質GDP 成長率の平均予測値は3.2%となっている。ただし、経済水準がコロナ禍以前にまで回復するのは2022 年度以降となる見込み。
(2)東北6県の見通しの前提
全国の予測に加え、以下のシナリオに基づいて予測を行った。個人消費は、全国と同様にワクチン接種が一定程度進むものの、引き続き自粛マインドは強く、緩やかな回復ペースとなる。住宅投資は、住宅ローン金利の下げ止まりなど、住宅を取得しやすい環境にはあるものの、コロナ禍の中では投信マインドの改善が期待できない。企業の設備投資は、輸出関連企業を中心に業績回復を受けて持ち直す。
公共需要は、コロナ対策関連予算が積極的に組まれていることから、高い水準で推移する。移輸出は国内経済の回復や海外経済の加速を受けて下げ止まる。
各県マクロモデルのフレームワーク
内閣府および国内主要調査機関の予測平均値
(注1)予測機関は内閣府と国内の民間調査機関10社の平均値である。
(注2)純輸出は実質GDPに対する寄与度である。
(注3)純輸出の寄与度は財貨・サービスの輸出の寄与度-財貨・サービスの輸入の寄与度により求めている。